都内、サンドイッチ店のお手伝いをしていた時の話になります。
閉店間近でイートインの40~50代のご夫婦と店員は私だけでした。
ご夫妻がお帰りで片づけにホールに出てご挨拶をすると奥様よりちょっとお話よろしいですか?と言われました。一瞬、何か不都合なことが?と頭をよぎったのですが、お客様の表情はいたって笑顔でしたのでホッとしながらお話を伺いました。
「昨年、私の父が亡くなったのですが、こちらのサンドイッチが大好きでそれで今日は主人と食べに来ました。父は、他界する数か月前にお医者様から、もう口から食べることができなくなるから食べたいものを家族に言って用意してもらいなさい。と言われ考える間もなく、ここのサンドイッチが食べたい、買ってきてくれ、と言ったんです。だから父が口にした最後の食べ物がここのサンドイッチで、あー美味しい、なんて美味しいんだと言って食べていました」
私が感謝の言葉と従業員全員に伝えますと言うと
「まだあるんですよ。父がいよいよ、となって家族が集まっているところで私がお父さん何かしてほしいことある?と聞いたら、『あそこのサンドイッチを買ってきてくれ。食べなくてもいいから』というので買ってきて見せたら『あーこれだこれだ、食べなくても美味しい、見ているだけで美味しい、幸せだ』そう言って父は旅立ったんです」
こんな話を当人から目の前で話をされたら…
やるしかないですよねサンドイッチ屋。
もちろん、そんな素敵なサンドイッチが作れるなんておこがましくて思ってはおりませんが、そんな素敵な話と同じことを自分の仕事にできたら、何に代えても誇れる仕事となるのではないかと思い決心しました。